「チーム医療」の現場で活躍する卒業生たち

訪問薬剤師として全国から注目が集まる在宅医療の取り組みを担っています。

患者様の生活の場へ。

 調剤薬局店舗勤務、薬剤師研修担当、本部運営などを経て、2011年からアイン薬局夕張店の在宅訪問専任薬剤師を務めています。夕張市は著しい人口流出により高齢化率が50%を超えていますが、市が推進する在宅医療が「夕張モデル」として全国から注目されています。医療、介護・福祉、行政、企業、あらゆる分野の連携で展開されるチーム医療は、薬剤師にとっては力量が問われる厳しさがある分、可能性もやりがいも大きい医療現場といえます。
 訪問薬剤師は、医師が基本2週間ごとに行う訪問診療後に出す処方箋、情報提供書に基づいて調剤した薬を、個人宅、グループホームなど通院が困難な患者様のもとへ届けます。単なるデリバリーではありません。患者様の理解力、生活パターンに合わせて丁寧に薬の説明をし、飲み忘れ・飲み過ぎ防止のアドバイスも具体的に行います。健康食品の質問や相談を受けることも度々です。生活の場での会話からは、離れて暮らすご家族のこと、日々の生活の様子などたくさんの情報が得られます。訪問をきめ細かな医療サービス提供に役立てるため、私自身が患者様にとって敷居の低い、身近な存在でありたいと思っています。

夕張市立診療所で週1回行われる多職種ケアカンファレンスには、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、作業療法士、管理栄養士、ケアマネジャー、相談員、診療所事務長などありとあらゆる職種、約20名が参加。個々の患者の情報、治療・ケア方針などの共有が図られます。

聴診器をかけた薬剤師。

 訪問時には患者様の血圧、脈拍、酸素飽和度を測定します。薬が効いているか、副作用はないかを確認するため、さらには訪問を異常の早期発見につなげるため、薬剤師にもフィジカルアセスメント※1は重要と考えています。患者様の状況は、必要があればすぐに医師と共有します。患部などをタブレット端末で撮影し、画像を医師に提供することもあります。
 訪問する患者さんの病状は様々です。がん終末期の緩和医療を在宅で受ける患者様もいます。医師らとともに在宅での看取り(みとり)も行っています。在宅医療に携わっていると、薬剤師の守備範囲がいかに広いかがわかります。薬剤師はチーム医療のキーパーソンになり得るのです。
 薬剤師として「夕張モデル」の確立を担いながら、後輩に新しい薬剤師像を示したい、そんな覚悟と使命感をもって在宅医療に尽力しています。
※1フィジカルアセスメント:問診、視診、聴診など患者の体に触れながら症状の把握や異常の早期発見を行うこと。

小島さんは日本在宅薬学会に所属し、薬剤師対象のバイタルサイン講習※2の指導者、エヴァンジェリストの認定を受けています。
※2 バイタルサイン:体温・血圧・脈拍などの生命徴候。
※取材:2018年
戻る